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〔10月17日UP〕
将棋人生、最後の大勝負

決戦! 人間vs.コンピュータ
米長邦雄=日本将棋連盟会長
梅田望夫=ミューズ・アソシエイツ社長
〜「中央公論」2011年11月号掲載

激突は一月十四日

梅田 前回の対談「次は私がコンピュータと対局します!」(本誌一月号)から、一〇ヵ月が経ちました。読者の方、将棋ファンの方は、その後どうなったのか楽しみにしていると思うんです。
 今日はコンピュータ棋戦で正式に米長先生が指されることになった経緯と具体的なスケジュール、そして大勝負に挑む米長先生の心境や勝算などについても伺いたいと思います。
米長 この記事は十月八日発売号に掲載ですよね。ではそれを前提にお話しします。十月に入りまして、私は記者会見をしました。意外な反響を呼んだ……ということにしておいてください。(笑)
 その記者会見では、来年一月十四日に将棋連盟から推薦された棋士がコンピュータソフトと対局をすることが正式に発表されました。対局者は、人間側が米長邦雄、コンピュータソフトがボンクラーズ。ボンクラーズは今年五月の世界コンピュータ将棋選手権で優勝したソフトですね。ルールは、持ち時間は三時間ずつで、時間が切れたら五九秒までの秒読み。主催については、まずはニコニコ動画を運営するドワンゴ、そして中央公論新社の二社共催となりました。
 私は今、将棋連盟会長であり、永世棋聖・元名人の引退棋士でありますが、一月十四日の対局は「永世棋聖・元名人の引退棋士」として指すつもりです。プロ棋士の一人としてとにかく持てる力をすべて発揮できるように、対局当日まで十分に備えたいというのが、現在の私の気持ちです。
梅田 なるほど。いろいろとご苦労もあったかと思いますが、ともかく「人間VS.コンピュータ」の次の対局が実現するというのは、将棋ファンとしてとても嬉しく思います。まずはおめでとうございます。
米長 ありがとうございます。

なぜ米長邦雄が指すのか

梅田 それで、私は将棋ファンであり、米長先生の大ファンですが、ファンを代表する形で、ちょっと聞きにくいことも質問させてください。
米長 どうぞどうぞ。
梅田 ではさっそくですが、今回の棋戦では、なぜ米長先生が指すことになったのでしょうか。
 私は、棋士というのは将棋のことが好きで好きで仕方がない人たちであるとともに、自分の目の前に「将棋が強い」と言われているヤツがいたら片っ端からぶった斬ってやるというような気持ちを持った人たちだと思っているんです。昨年、清水市代女流がコンピュータ将棋システム「あから2010」に敗れて、「コンピュータが強くなった」
ということが世間で大きな話題になりましたね。そうした状況を受けて、「会長は引っこんでいてください。コンピュータがそんなに強いのなら俺に指させてください」という人はいなかったのでしょうか。
米長 なぜ私が指すことになったのか。端的に申し上げて、理由は二つあります。「物語」と「お金」ですね。
 まず「物語」についてお話ししますと、私は会長になってすぐに「プロ棋士は、対局料一億円以下の場合、公の場でコンピュータと対局をしてはならない」というルールを
作りました。これは前回の対談でもお話ししましたが、とにかく人間とコンピュータの戦いを長く続けていくことで、お互いが切磋琢磨していく物語を作りたかったんです。
そのためには「ちょっと指してみたい」というだけで簡単にプロ棋士が対局をするべきではないと考えたのです。もし指すのならそれにふさわしい「場」と「物語」を整える必要があると。
梅田 ええ、よく分かります。
米長 その後、大和証券がスポンサーについて、渡辺明竜王対ボナンザ戦が初の人間VS.コンピュータ戦として成立しました。結果は渡辺明が勝ちました。
 そして、次に清水市代が「あから2010」と対局をしました。この対局に清水が負けてしまった。清水が負けたということは女流棋士のナンバーワンが負けたということ
ですから、将棋連盟としては、次は男子プロ棋士を出さなくてはいけないということになります。
 では男子プロの誰が指すべきか。これにはいろいろな考え方があると思います。一つは羽生善治をはじめとしたタイトルホルダー。彼らが今の将棋界では一番強いわけですね。もう一つは四段・五段で勝率七割を超えているような調子の良い若手棋士。彼らが強さとしては二番目の集団です。そしてもう一つが中堅棋士。何年も安定した成績を残しているプロ棋士たちです。そして、もう一つが引退棋士。
梅田 引退棋士は前回の対談で出てきたアイデアですね。

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